米海軍のコロナ対策、任務航海前の空母と艦載機に多大な影響
春季任務航海3年分の、空母の出航状況と艦載機の訓練状況比較
定期修理後の試験航海を行っていた空母ロナルド・レーガンが、5月15日に横須賀に帰港した。やや長めの、11日間の試験航海だった。
この試験航海の期間中に、岩国配備の空母艦載機のFCLP(陸上基地を使った離着艦訓練)とCQ(空母の飛行甲板への着艦訓練・着艦資格取得訓練)の場所とスケジュールが、岩国市などに
通知された。
通知されたスケジュールをもとに、現在進行中の空母と艦載機の動きを、一部推定を交えて過去2年間の動きと比較したのが、上掲のグラフだ。
基本的なパターンは2019年のものだ。この基本パターンが、今回、コロナ対策でどのように変えられたのだろうか? (2018年は空母の定期修理の不具合が試験航海中にわかったためか、
FCLPが中断・再開され、10日間ほどスケジュールに遅れが生じた)
今年の艦載機の乗艦前訓練は、2グループに分かれて行われる。第一グループのFCLP終了から第2グループのFCLP開始まで2週間以上離れている。また、空母の試験航海出航の前に始まる
FCLPが、出航後1週間以上遅れて開始されている。
コロナ対策で航空部隊にも2週間の行動規制(ROM)がFCLP開始前に課せられている、と考えられる。そのROMも、岩国基地のキャパのために、部隊全員が同時に部隊外部との接触を絶つ
ことがむつかしいので、半分に分けて硫黄島に「こもる」やりかたにしたのではないだろうか?
また、FCLPに続くCQの実施も、艦載機の岩国移転後は空母を四国南方の臨時訓練空海域に回していたのを、今回は硫黄島近海で行うことになる。これも、FCLPを終えた艦載機部隊が岩国
にいったん引き上げると、隔離状態を維持することがむつかしくなるという事情もあるのだろう。
乗艦前2週間の隔離など、任務航海中の空母艦内でのコロナ・ウィルス感染拡大防止策のために、空母着艦資格を得てすべての艦載機が空母に展開するのは、昨年とくらべても半月以上遅くなる。
単にスケジュールがずれ込むだけでなく、兵士の隔離状態(家族と過ごす時間もない)は間違いなく2週間以上延びている。さらに任務航海に出た空母や護衛の艦船の乗員は、寄港地で上陸するこ
とも許されないから、閉ざされた空間の中で連続して過ごす期間は、昨年までの航海と比べて極端に長くなる。
これが兵士の行動にどんな影響をおよぼすのだろうか?
(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)
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